2020/04/22

今日の植物公園[4月22日号]

 広島市植物公園は、新型コロナウイルス感染症に係る緊急事態宣言の発令により、4月22日(水)から5月17日(日)の間、臨時休園しています。

 休園期間中は、園内の開花情報や自宅で学べる・楽しめる植物に関する情報を日替わりで提供していきます。

 人と人との接触機会を減らす取組にご理解とご協力をお願いいたします。

本日の話題:落ちない葉っぱ「ヤマコウバシ」の落葉

落ちない葉っぱ「ヤマコウバシ」のカード
冬のヤマコウバシの様子 平成25年1月9日撮影

 植物公園で話題になる植物の一つにヤマコウバシがあります。上の写真の様に冬になっても葉が落葉せず、受験の時期まで葉が落ちないことから、受験の縁起物として売店で頒布しています。春になり受験シーズンが終わると取り上げることはないのですが、果たして春になるとどのような姿になるのでしょうか?

ヤマコウバシの展葉 令和2年4月20日撮影

 早速答え合わせですが、写真の様に前年の古い葉が落ち、新しい葉が開き始めています。

 植物にとって葉はエネルギーの生産場所ですので、古い葉(茶色になった葉)は役目を終えています。普通の落葉樹は不要になった葉をすぐに落とすわけですが、ヤマコウバシの場合は落とすタイミングがずれて春先まで残っています。理由は明白ではないのですが、もともとこの仲間の原産地は熱帯であり、祖先は常緑樹でしたので、その性質を保ったまま日本まで分布域を広げた結果であると考えられています。一年中暖かい場所では葉を決まった時期に落とす必要がなかったというわけです。

クスノキの展葉 令和2年4月20日撮影

 もう少しヤマコウバシの仲間(クスノキ科)の植物を観察してみましょう。

 街中で一番よく見る仲間はクスノキ、広島市の木でもあります。毎年この時期になると、前年の葉が一斉に落ち、新しい葉が一斉に開くので木全体が黄緑色~赤色に色づいたように見えます。「常緑樹=一年中葉がある樹木」ですが、ずっと同じ葉がついているわけではありません。短いものではわずか数日、長いもので数十年と一枚の葉がついている時間には幅があるようです(及川ほか 2013)。根気が要りますが、同じ個体の葉を定点観測してみると新しい発見があるかもしれませんね。

ゲッケイジュの開花 令和2年4月20日撮影

園内を歩いていると、ゲッケイジュの花がちょうど咲いていました。ゲッケイジュもクスノキ科の植物です。古代ギリシャ・アポロンの聖木で月桂冠として知られていますが、現在では肉の臭み消しに使うハーブ「ローリエ」といった方が通りが良いかもしれません。花は小ぶりですが、アブなどの虫によって花粉を運ぶ虫媒花です。

 5月の連休明けのころにはクスノキの花も木一面に咲き出します。とても小さな花なので誰にも気づかれることなく、ひっそりと咲いています。家の近くの公園などでクスノキを目にする機会があれば、枝先に注目してみてください。