リンネの花時計(Horologium Florae)について
植物の花が活動(開花・閉花)する時間は、植物の種類ごとに決まっており、虫に花粉を運んでもらう花(虫媒花)では、花を訪れる昆虫などの活動時間に合わせて開花するものが多くあることが知られています。
植物公園では、毎年夏に夜間開園を行いますが、ゲッカビジンなど夜に咲く花をご覧いただく目的で実施しています。今年は、現時点では、8月21日(土)から午後8時まで開園の予定で開催する計画にしていますが、新型コロナウイルス感染症対策のため、変更する可能性があります。夜間開園の詳細は最新のイベント情報欄をご確認下さい。
さて、「日時計」や「砂時計」と同じような発想で、花の活動を基にした(概ね決まった時間に開花・閉花する植物を利用した)「花時計」も知られています。この花時計の発案者は植物の分類でよく知られたカール・フォン・リンネで、1751年に著書Philosophia Botanicaのなかで、具体的な植物名を挙げて、花の活動を基にした「リンネの花時計」をデザインしました。
今回は、夏の植物公園で見ごろを迎える花時計に使えそうな植物をいくつかご案内します。変化朝顔以外の植物の花は「花の進化園」でご覧いただけます。
アサガオ(夜明け前に咲く花)
変化朝顔 令和3年8月6日撮影 |
夏を代表する花、アサガオは朝早くというよりも夜明け前に開花します。植物公園では、8月21日(土)~29日(日)にかけて、展示会「変化朝顔展」の開催を予定しており、バックヤードでたくさんの鉢を展示会に向けて育てています。
スイレン(早朝に咲く花)
スイレン 令和3年8月6日撮影 |
スイレンは早朝に開花し、昼過ぎには花が閉じます。花が開いたり閉じたりを3日ほど繰り返すことから、眠る様子に見立てて、漢字で「睡蓮」と書きます。
ハゼラン(夕方に咲く花)
ハゼラン 令和3年8月5日撮影 |
ハゼランは別名でサンジソウ(三時草)とも呼ばれ、名前の通り午後3時ごろから数時間のみ花を咲かせる植物です。熱帯アメリカ原産で、元々は明治時代に園芸植物として導入されたものですが、各地で逃げ出して雑草になっています。和名のハゼラン(爆蘭)は、小さな花が丸いつぼみから弾ける様に次々と咲くことからつけられたようです。
オシロイバナ(夕方から夜に咲く花)
オシロイバナ 令和3年8月6日撮影 |
オシロイバナは子供の草花遊びでおなじみの植物ですが、花は夕方にならないと咲かず、日中は写真のようにつぼみが閉じた状態です。英語では「Four O'clock(午後4時)」、中国語では吃飯花(食事花)と呼ばれ、どちらも開花時間に因む名前です。
おまけ:日本で2番目に古い起源をもつ花時計
これまで紹介してきた「リンネの花時計」のほかに、本物の時計と花壇が一体となったモニュメントとしての「花時計」も知られています。
広島市内では、元安橋東詰(かき船かなわの道路向かい)に花時計があり、神戸市役所のものに次いで日本に2番目に古い起源を持っています。この花時計は、「広島復興大博覧会(1958年4月1日~5月20日)」の開催に合わせて、シチズン商事株式会社の出展物として平和大通りの会場に設置されたものです。博覧会後は広島市に寄贈され、元広島市公会堂の南側緑地帯に1986(昭和61)年まで稼働していました。
元安橋の花時計は、平和大通りの花時計の流れを汲む後継として、現在の場所に1992(平成5)年5月に設置されたものになります。過去の歴史を伝える大切なモニュメントの一つとして永く大切にしていきたいものです。