2021/10/30

熱帯スイレン温室の熱帯性スイレン②

 熱帯性スイレンには、一般的な昼に花を咲かせる昼咲き種以外に、夜開性の夜咲き種があります。それらは、原種Nymphaea lotusN.pubescensの交配種からなる夜開性の品種たちです。夜開性種は日没後に開花し始め、翌朝10時頃まで開いています。夜間開園の時や朝一番開園直後にはその開いた姿を見ることができます。

 スイレン温室では、大型になりスイレン鉢では作りにくい夜開性のスイレンも育てています。2回目の今回はそんな夜に開くスイレンたちを紹介したいと思います。

熱帯性スイレン ロツス

熱帯性スイレン プベスケンス(ルブラ)

 上に示したのは「ロツス」N.lotusと「プベスケンス」N.pubescensです。一般的な夜開性スイレンの原種はこの2種です。ロツスは白花、プベスケンスは白、ピンク、赤花(ルブラと呼ばれる)があります。夜開性スイレンの葉は鋸歯がハッキリしてゴワゴワとした触感です。昼開性の種よりも株が巨大な傾向があり、葉も脆く乾きやすいため、スイレン鉢での栽培には向きません。

 原種に白、ピンク、赤しかないため交配種もこの3色しかなく、品種ごとの特徴が小さいです。そのため品種が混ざってしまうと簡単に見分けがつかなくなってしまいます。その中でも特徴的な夜開性品種を紹介していきます。

熱帯性スイレン レッドフレア

 「レッドフレア」は、夜開性品種の中で最も赤い品種です。美しい銅葉の葉と赤い花のバランスの良い、いい品種です。

熱帯性スイレン アンタレス

 「アンタレス」は、赤みが強い品種で、特別に花上がりが良い品種です。5号鉢に植え、50~60 cmぐらいのスイレン鉢を用意すれば、何とかスイレン鉢でも栽培できる(花がそれなりに上がる)品種の一つです。

熱帯性スイレン ミズーリ

 「ミズーリ」は、超巨大な花を咲かせる夜開性品種です。花弁には脈に添ってしわが入ります。花上がりは緩慢で週に1回ぐらい咲くと良いぐらいのペースです。

熱帯性スイレン マルーンビューティー

 「マルーンビューティー」は、巨大なピンクの花を咲かせる夜開性品種です。花弁が長く、中央の色が薄いため、豪華な印象の花です。花上がりは緩慢で、週に2回ぐらい咲くと良いぐらいのペースです。

熱帯性スイレン サーガラハッド

 「サーガラハッド」は、緑の葉に白い花の夜開性品種です。次々と花を咲かせる花上がりのよい品種です。ロツスと比べると花弁の先が丸いです。朝遅く10時頃まで花を咲かせているので比較的花を見やすい品種です。

Nymphaea sp.[subgenus Hydrocallis](Peru)

 実は夜開性の熱帯スイレンにはもう一つ系統があります。それが中南米に生育する、ヒドロカリス亜属のスイレンたちです。ヒドロカリス亜属のスイレンは、開花時間が数時間と短く、深夜になってから花が開く種が多いため、園芸的にはあまり利用されていません。この種は浮き葉が赤く、花がなくても見ごたえがあるため、水槽用の水草として日本に導入されたものです。この種の開花は7時半~10時頃までの2時間ほどで、開花2日目の花しか完全開花しません。

 いかがでしたでしょうか。

 夜開性スイレンを夜に見ることができる夜間開園を11月の後半から12月の土曜日に予定しています

  • 予告:花と光のページェント~クリスマス夜間開園~
    • 11月27日(土)
    • 12月4日(土)、11日(土)、18日(土)、25日(土)
      • 午後8時まで開園時間を延長

 ぜひとも、暗い中でぼおっと咲く姿を見に来てください。また、夜が長く、朝が遅くなるこの時期は、朝一番のスイレン温室で、夜開性品種の開いた姿を見られる時間が長くなります。ぜひ朝一番に熱帯スイレン温室へ足を運んでいただけたらと思います。