2022/05/21

今週の植物公園(樹木の新芽が開くとき)

 ツツジなどの春の花木の剪定作業を各所で行っています。今日(5/19)は、レストランから休憩展望塔にかけてのスロープで、トサミズキの剪定を行っていました。

 がっつり刈り込んでいるように見えますが、トサミズキは腰の高さまで強剪定しても、1年で人の背丈を超える高さまで戻ります。あまり高くなると、広場のソメイヨシノやさらに奥の瀬戸内海と宮島が見えなくなるので、この時期に毎年剪定をしています。

トサミズキの花後の剪定 令和4年5月19日撮影

トサミズキの花

 機械を使う剪定などは基本的に休園日に実施することにしていますが、この時期は剪定する面積が多いため、やむを得ず平日にも実施しています。広場周辺でおくつろぎいただいている方にはご迷惑をお掛けしますが、植物をよりよく管理するために必要な作業ですので、ご理解をいただけますと幸いです。

 さて、前置きが長くなりましたが、今週の植物公園では樹木の展葉(新芽が開くとき)について取り上げてみたいと思います。以下の写真は全て樹林観察園で本日(令和4年5月19日)撮影したものです。

樹木の展葉(新芽が開くとき)

 この時期に樹木を観察すると、今年伸びた葉と去年の葉の違いがよくわかります。例えば、下の写真のユズリハでは、明るい緑色に見える部分の葉はすべて今年に出てきた葉です。

ユズリハ(ユズリハ科)

ユズリハ Daphniphyllum macropodum Miq. subsp. macropodum

 ユズリハ(譲り葉)の語源になっているように、新しい葉の展開が終わると、一昨年の古い葉が次第に黄色くなり、譲るように葉を落とします。

シロダモ(クスノキ科)

シロダモ Neolitsea sericea (Blume) Koidz.

 シロダモの新芽は葉の表面ビロード状の茶色い毛が密生しており、黄金色に輝いているように見えます。この毛は葉が開くにつれて次第に抜け落ちてなくなります。

タブノキ(クスノキ科)

タブノキ Machilus thunbergii Siebold et Zucc.

 タブノキは照葉樹林を代表する植物の一つです。展開したばかりの葉は赤色を帯びるのが特徴的です。葉に光沢があり、離れて見てもよく目立ちます。

サカキ(モッコク科)

サカキ Cleyera japonica Thunb.

 サカキの展開したばかりの葉は何色と表現しづらいのですが、独特の色味をしています。神前に玉串を奉奠されたことがある方はイメージがしやすいと思いますが、サカキの枝は平面的に伸びているので、台の上に重ねて置きやすい形をしています。新芽が鎌形に曲がっているのも分かりやすい特徴です。

コウヤマキ(コウヤマキ科)

コウヤマキ(コウヤマキ科)

 針葉樹でも同じ様に新芽が開く様子を観察することができます。コウヤマキは1年に1節ずつ伸びる性質がありますので、枝の根元をたどっていくと、その枝の年数やその年の成長度合いを調べることができます。コウヤマキは英語では「Japanese umbrella pine(直訳すると日本の傘松)」と呼ぶのですが、今日撮影した新芽の様子が強風で逆さになった傘のようにも見えました。

まとめ

 新芽が開いていく様子に、植物ごとの個性(違い)があることをお分かりいただけたでしょうか。植物にとって、葉は光合成をして栄養を作るために必要不可欠なものです。葉にも寿命があるので、定期的に新しい葉と入れ替えるわけですが、出始めの葉は柔らかく脆いため、太陽の強い光(紫外線など)に耐えるための工夫がいろいろ考えられています。写真で紹介したタブノキの赤い葉(赤い色素アントシアニンをつくり葉を紫外線から保護する)やシロダモのビロード状の毛(光を毛で乱反射させることで、葉に届く光を減らす)はその一例です。一つの植物でも、じっくりと観察することで、様々な特徴を見つけることができます。

 四季折々の植物の変化を楽しむ一つのきっかけとして、樹木の新芽が開く様子に注目してみてはいかがでしょうか?身近な場所にある1本の樹木を定点観測するのもおすすめです。