植物よもやま話(ベンガルボダイジュ)
広島市植物公園ブログ
2021/04/13

植物よもやま話(ベンガルボダイジュ)

ベンガルボダイジュ Ficus benghalensis L.

 大温室のリニューアル工事にあわせて、シンボルツリーのオーストラリアバオバブの他に沖縄や長崎から、様々な熱帯植物を大温室に新規導入しました。今回紹介するベンガルボダイジュもその一つで、大温室の中でもココヤシに並んでひときわ背が高い植物です。

 ベンガルボダイジュの原産地はインド(ベンガル地方)で、現地では豊穣と長寿と神聖のシンボルとして大切にされています。お釈迦様ともゆかりのある植物で、「菩提樹」の下で悟りを開いた後にこの木の下で1週間座禅瞑想をしたそうです(満久 1972)。なお、お釈迦様が悟りを開いた「菩提樹」は近縁種のインドボダイジュのことで、スリランカ由来の株が隣に植えてあります。

 熱帯の樹木は背が高くなるものが多いですが、本種も例外ではなく、現地では30m以上の高さまでとても大きく成長します。他の植物に覆いかぶさるようにして成長し、最終的に枯らしてしまう「絞め殺し植物」としても有名で、カンボジアのアンコールワット遺跡では遺跡を覆いつくすように成長した株がよく知られています。

 日本では小さく仕立てた株を観葉植物として家庭で楽しむことが多いですが、沖縄や東南アジアでは街角で木陰を楽しむ緑陰樹として親しまれている身近な植物でもあります。


ベンガルボダイジュの果実

 さて、当園のベンガルボダイジュの株をスロープデッキからよく見ると、1センチ弱の大きさの果実がたくさんついています。イチジクのなかまで、図鑑を見ると赤く熟すと食べられるようですが、おいしいかどうかはわかりません。写真の実は熟すまでもう少しといったところです。

シキミの花 Illicium anisatum L.

 今回は聖なる木としてベンガルボダイジュを取り上げましたが、世界のさまざまな宗教ではそれぞれ様々な植物を神聖な植物として植物として大切にしています。その全てが植物園に植わっているわけではありませんが、一つのテーマとして観察してみると面白いかもしれませんね。仏教つながりでは、花の進化園(熱帯スイレン温室の下側の出入り口の近く)でシキミの花が沢山咲いていました。

 このほかにも、園内では紹介しきれないぐらい多くの春の花が咲いていますので、ぜひ遊びに来てください。