植物よもやま話「サボンソウ」
広島市植物公園ブログ
2018/07/04

植物よもやま話「サボンソウ」

 植物よもやま話は、見どころ案内や花ごよみでは紹介しきれなかった園内の植物について、広報担当の職員が紹介するコラムです。不定期で更新する予定です。

 第1回の更新では、花の進化園で見頃の「サボンソウ」を紹介します。

サボンソウ 平成30年7月1日撮影
  • 和名:サボンソウ
  • 学名:Saponaria officinalis L.
  • 原産地:欧州
サボンソウのサボンとは、ポルトガル語のサボン[sabão]が由来で石けんの意味。全草(特に根の部分)にサポニンの呼ばれる界面活性作用のある物質(洗剤の成分)を多く含んでいます。実際に葉を揉むと、石けんのようによく泡立ちます。古くから、ヨーロッパでは石けんや咳止めの薬として用いられてきました。今日では、ソープワートという英名でハーブとして流通しています。

エゴノキの花(サポニンを多く含む植物)

 サポニンを多く含む植物として、エゴノキ、ムクロジやサイカチなどが知られています。洋の東西を問わず、石油合成の石けんが出回るまではこれらの植物が洗濯に用いられていました。

ブンタン(文旦)

 ザボンといえば、文旦(土佐文旦や河内晩柑)を思い浮かべる方も多いかもしれません。こちらも同じくポルトガル語が由来です(ザンボア[zamboa])。石けん(サボン)と関係があるのかいろいろな文献をあたってみましたが、どうやら、語感が似ているだけのようです。文旦の原産地である東南アジアの現地語がポルトガル語に取り入れられ、日本に伝わったのでしょう。

 ザボンは世界最大の柑橘類ですが、世界に広まる過程で名前もいろいろ変化していきました。ポルトガル・スペインではザボンでなんとか通じそうですが、英語ではポメロ(こちらはドイツ語とポルトガル語の造語:大きなレモンの意味)と呼ばれています。ブンタン・ザボン・ポメロ…いちばん美味しいのはどれでしょうか?

参考文献