植物よもやま話:バルサ
広島市植物公園ブログ
2019/05/06

植物よもやま話:バルサ

 植物よもやま話は、見どころ案内や花ごよみでは紹介しきれなかった園内の植物について、広報担当の職員が紹介するコラムです。不定期で更新する予定です。

 5回目の更新では、水に浮かぶ木「バルサ」を紹介します。

バルサの花 令和元年5月4日撮影

 バルサは中米~南米北部(メキシコ南部・エクアドル・ブラジルなど)原産のパンヤ科(アオギリ科)常緑高木です。コーンに盛ったアイスクリームのような独特の花が開花しました。花は夕方の日没ごろに咲き始め、ミツバチなどの昆虫や小動物が花粉を運びます。

 バルサ(Balsa)とは、スペイン語で筏を意味する単語です。探検家トール・ヘイエルダールがインカ時代の筏船を模したコンティキ号で太平洋を横断した際の筏材としてよく知られています[コン・ティキ号探検記]。材が軽く(水に浮き)、加工しやすく、軽い割には強度があることから、古くから船材に用いられてきました。

 世界で最も軽い木(木材)として紹介されることも多い植物ですが、この表現は正確ではなく、”市井に流通するなかでは…”と但し書きが必要です。植物としては、より比重の軽い樹種(流通性のある樹種としてはQuipo[クイポ、Cavanillesia platanifolia (Humb. & Bonpl.) Kunth]が最も軽い?)もありますが、脆く壊れやすい、入手性が悪いなどと木材としての実用性がないので、見かけることがないだけなのです[参考:金平ほか(1919)Wiepking and Doyle(1955)]。なお、バルサの材は、模型飛行機や救命浮環などに用いられています。
 
 ちなみに、日本原産の樹木で最も比重の軽い木はキリとされますが、沖縄のデイゴもほぼ同じ比重で、どちらが日本一かは木の個体差や測定条件によるところも多く、判定は微妙です。

1年前のバルサの木(樹高約2 m) 平成31年5月3日撮影

 バルサは生長の早い木としても知られており、現地では樹高が30 mを超えることもあります。植えた時には人の背丈ほどだった株が、1年の間に高さ約10 mの管理用通路に届くまでに生長しました。特徴的な大きな葉は、少しでも早く伸長して、ほかの植物との光を巡る競争に負けないようにするための戦略です。このような戦略をとる植物のことをパイオニア植物(先駆植物)と呼んでいます。大温室の中で伸び伸びと育つバルサの木をご覧ください。

現在のバルサ(樹高約10 m)