熱帯スイレン温室の熱帯性スイレン①
広島市植物公園ブログ
2021/10/28

熱帯スイレン温室の熱帯性スイレン①

 屋外のスイレンシーズンは終わってしまいましたが、熱帯スイレン温室では熱帯性スイレンの花を一年中楽しむことができます。今後3回に分けて、スイレン温室で見られる熱帯性スイレンとその裏側についてお伝えしたいと思います。

 今年度、新しい品種をスイレン温室に導入しました。初回の今回は新たに導入したものを中心に、スイレン温室の熱帯性スイレンの品種を紹介したいと思います。

 現在、熱帯スイレン温室では50を超える品種を保有しています。プールでのびのび育った熱帯性スイレンは株径2~3 mを超える巨大な姿をしており、品種によっては20 cm近い巨大な花を咲かせます。

熱帯性スイレン フォックスファイヤー

 上に示したのは「フォックスファイヤー」という品種でIWGS(国際スイレン協会)主催のコンテストで2004年に最優秀賞を受賞した品種です。一枚の葉が50㎝程度の大きさになるため、一般的なスイレン鉢では育てるのが困難な巨大種の一つです。

 熱帯性スイレンの品種改良の歴史は比較的浅く、20世紀になってから本格的な育種が始まりました。様々な原種を掛け合わせ、花形や性質などの異なる品種が作られています。

熱帯スイレン アバランチ

 上の写真の「アバランチ」(2006年IWGS最優秀賞)は、交配元は明らかになっていませんが、おそらく原種Nymphaea amplaを交配親に使用した品種の一つです。雄しべが弁化し、中央部が盛り上がって見える「丁字咲」の花形になります。この品種を作出したプレスネル氏がリリースした「ジェニファープレスネル」や「レイチェルプレスネル」、また、先程紹介した「フォックスファイヤー」も似た花形をしているため、N.amplaの血を感じます。

 スイレンの魅力は花だけにはとどまりません。その葉には赤茶や黒の斑が入るものも多く、緑との美しいコントラストで水面を彩ります。斑は葉の成長段階によってその濃さが変化していくため、順番に広がる葉の生長を感じることができます。

熱帯性スイレン ウルトラバイオレット

 その中でも特別な葉を持つものが上の「ウルトラバイオレット」(2008年IWGS最優秀賞)です。ワインレッドの濃い銅葉は、濃淡による迷彩模様が入り、他の品種にはない美しさです。

 青、紫、白、黄色、ピンクなどカラフルな熱帯性スイレンは、内側から光っているようなビビットな色合いの品種がたくさんあります。しかし、残念なことに「昼咲きの赤い品種」は無いのです。
 
熱帯性スイレン ブルズアイ

 赤い品種は育種家の悲願の一つです。上の「ブルズアイ」は2007年にリリースされた新しい品種で、現在ある熱帯性スイレンの中では最も赤い品種の一つです。赤というよりは特別濃いピンクですが、これからの育種に期待したいところです。

 熱帯性スイレンの花は株の大きさによって、また品種によってその花弁の数が大きく変わってきます。プールでの栽培ではスイレン鉢では見られないような50枚を超える豪華な花を咲かせる品種もあります。

熱帯性スイレン ブルーアスター

熱帯性スイレン タンザナイト

熱帯性スイレン プラムクレイジー

 「ブルーアスター」は2005年の、「タンザナイト」は2009年の、「プラムクレイジー」は2013年のIWGS最優秀賞を受賞した品種です。広いプールのような場所で、適当な管理を行い、上手に育てるとどれも花弁数が50枚を超えて、全体が盛り上がるような豪華な花を楽しむことができます。 

 いかがでしたでしょうか。 植物公園では、ブログで紹介しきれなかった品種もたくさん導入しています。

 今週末、熱帯スイレン温室のプールで咲く豪華なスイレンたちを楽しんでいただけますと幸いです。