今日の植物公園[5月12日号]
広島市植物公園ブログ
2020/05/12

今日の植物公園[5月12日号]

 春と言えば卒業式や入学式でコチョウランなどが多く飾られ、あるいは贈答用としてもらうことも多く、この時期になるとコチョウランの花後の管理についての園芸相談もよくあります。今春は新型コロナウイルスの関係で、卒業式や入学式でのランの需要が激減し、ランを始め多くの生産者が大変な思いをされています。本園も完全休園に追い込まれていることもあり、一日でも早い終息を願わずにはいられません。

 今日は、園内のランについてご紹介したいと思います。

 最初にご紹介するのはバニラです。バニラと言えば、アイスクリーム。高級アイスクリームに入っている黒いつぶつぶはランであるバニラの莢の中にある種子になります。今年は長くバニラの花が楽しめる状態となっています。今日は残念ながら花が咲いていませんでしたが、まだ蕾が多くあり、もうしばらくは楽しめるかと思います。

バニラの蕾 令和2年5月12日撮影

 花が咲くと職員がせっせと人工授粉を行っていますが、一般的に結実率はそんなに高くありません。人工授粉に成功して、莢(さや)が成長を開始している状況にはまだ至っていませんが、今後莢を観賞できるかなと思われるものを見つけました。

画面中央のずい柱が付いている緑色の部分が莢になる所

 ずい柱が長くついていることから、今後莢が成長してくる可能性大です。無事に成長し、莢の観賞、その後の収穫、バニラの香りを楽しんでもらえるところまで推移してほしいところです。

 本園に詳しい方ならご存知だと思うのですが、大温室内の溶岩の岩組に飾ってあるランは基本的に園芸品種です。野生種はフクシア温室奥にあるスペースで展示しています。ですが、大温室の岩組に全く野生種が展示されないということはありません。

 今日、大温室を覗いてみるとありました。ベトナム原産のパフィオペディルム・デレナティです。パフィオペディルムは食虫植物(ウツボカズラ等)と間違われることがありますが、食虫植物ではありません。ウツボカズラは一旦落ち込んでしまうと脱出はほぼ無理ですが、パフィオペディルムは袋の中に落ち込んでも脱出ルートが用意されています。唯一の脱出ルートを通ると受粉が完了する仕組みとなっています。自然界の巧妙な仕組みに感嘆します。

パフィオペディルム・デレナティ 令和2年5月12日撮影

 次はシランです。 筆者が一番最初に覚えたランがシランです。小学校低学年の頃、学研のひみつシリーズの1冊「なまえのひみつ」に出てくる博士?(先生?)と子どものやりとりが印象的だったので覚えました。日本にも自生するランで白花も見掛けます。群生させるとなかなか見ごたえがあるランです。

シランの花 令和2年5月12日撮影

 最後はエビネです。まだ、いくつか咲いているかと日本庭園奥に向かうとありました。4月下旬に見頃を迎え、現在はほとんどありません。今年最後の1株と言っても良いでしょう。今シーズン入園者の方に楽しんでいただけなかったことが残念です。来年は、ぜひ多くの方に観賞してもらえたらと思わずにはいられません。

エビネの花 令和2年5月12日撮影