植物よもやま話:「藍染の技法」
広島市植物公園ブログ
2021/03/11

植物よもやま話:「藍染の技法」

 植物よもやま話は、見どころ案内や花ごよみでは紹介しきれなかった園内の植物について、広報担当の職員が紹介するコラムです。不定期で更新する予定です。 
  
 9回目の更新では、展示資料館で行っている「草木染の世界」展から、藍染の技法について紹介します。本年のNHK大河ドラマ「青天を衝け」において、主人公渋沢栄一の生家の生業として取り上げられたこともあり、「藍染」に興味を持たれた方も多いことと思います。会場の展示室では、4月1日(木)まで、広島草木染の会の会員16名の作品20点を展示しています。

藍染の原料植物のアイ[タデアイ]

乾燥させたアイの葉(左)とすくも(右)

 アイは、草木染に用いる植物染料の中でも少し変わった特徴を持っています。草木染では、植物を鍋などで煮だした染色液に布をつけ、アルミや鉄などの媒染材で色素を定着させます。ですが、藍染には媒染材は必要なく、発酵させたアイが空気酸化によって青色に染まります。デニム地のズボン(ジーンズ)の青色も藍染と同じ色素で「インディゴ」と呼ばれています。

藍染の工程(説明パネル)

 藍染には専門的な高度な技術が必要なため、「紺屋」と呼ばれる専門職人が存在します。徳島県(阿波)が産地として有名で、染料のもとになるすくもでは60%のシェアを占めています。洋装が一般的となった現在では、藍染はなじみが薄くなってきていまが、年配の方であれば、子供の健やかな成長の願いが込められた「麻の葉模様の布おむつ」の記憶がある方も多いのではないでしょうか。

「蛍 ホタル」坊垣内 みどりさん

さて、会場に展示している藍染作品では、様々な染色技法を用いて作品を仕上げています。基本的な技法について、展示作品とあわせて簡単に解説します。

  • 板締め絞り
    • 畳んだ生地を両側から木板で両面から挟み締め、染料液につける技法。上の写真の作品では、四分円(1/4円)の輪2枚で模様ができています。なお、麻の葉模様も板締めで描かれる模様です。

「MooN Light」 和田ちとせさん

  • 縫い締め絞り
    • 糸で縫い、縫った個所を締めてから染色液につける技法。上の写真の作品では、白くライン上に抜けた部分が縫い締め絞りによって描かれた部分です。

「四十七年経った いま」 三宅和美さん

  • 筒巻き絞り
    • 生地を筒状のものにしわを寄せながら巻き上げることで、揺らぎのある水面のような模様をつける技法。上の写真の作品では、さざ波の文様が筒巻き絞りで見事に描かれています。
「夏の終わり」 坂本 祥子さん

  • 抜染剤による脱色
    • 絞りの染色の技法に加えて、部分的に色を抜くことで作品に奥行きと意匠を加える技法。上の写真の作品では、筒書きでホオズキを柔らかなタッチで描いています。

 会場には、ブログでは紹介しきれないほど多くの力作が集まっています。奥深い藍染めの世界をぜひ一度ご覧ください。