今日の植物公園[5月10日号]:カカオについて
広島市植物公園ブログ
2021/05/10

今日の植物公園[5月10日号]:カカオについて

本日の話題:カカオのさや(カカオポッド)の解体

 植物公園の大温室には、熱帯果樹を集めた「くだものと暮らしのコーナー」があり、バナナやコーヒーなど様々な果物が実っています。身近な植物を集めていることもあり、人気があるコーナーです。高い位置に成る植物も、スロープデッキのおかげで小さい子供でも目線の高さで観賞することができます。

 本日はチョコレートの原料植物であるカカオのさやの中身をご紹介したいと思います。植物公園では毎年実をつけていますが、国内で展示している施設は少なく、県内では当園のみで見ることができる珍しい植物です。

カカオの木と果実 令和3年5月10日撮影

 カカオは幹から直接花が咲き、結実する特徴があり、幹生花・幹生果(かんせいか)と呼ばれます。熱帯の植物に多く見られる特徴で、カカオの他にはパパイヤやジャボチカバ、ドリアンなどが有名どころです。白い小さな花が咲いてから、半年ほど経つと色づいて収穫できるようになります。

収穫したカカオのさや(カカオポッド)

 早速、収穫したカカオのさや(カカオポッド)を解体してみましょう。包丁で縦切りにしたいと思います。さやは結構固く、包丁を入れた感じはカボチャのような固さでした。

縦切りしたカカオのさや

 包丁で二つに割ったところです。種の周りが白いふわふわした繊維(果肉)で覆われています。この白い果肉はカカオパルプと呼ばれ、生で食べることができます。一口味見をしてみましたが、マンゴスチンの様な甘みと酸味がある味でした。現地ではフルーツ代わりに食べられており、東京ではカカオパルプをジュースとして提供しているお店もあるそうです。

カカオのさや(中身を取ったところ)

 カカオパルプとカカオ豆を取り出したさやが残りました。見た目はゴーヤの様な感じですが、さやの部分は硬くて食べられません。カカオの種子は動物散布とされていますが、この固いさやをどうやって割って食べているのでしょうか。

種子(カカオ豆)

 最後に、種子(カカオ豆)を取り出してみました。まだ未熟な状態でしたが、約30粒ほど入っていました。この種子を原料に発酵・焙煎といった複雑な工程を経てチョコレート製品ができあがります。

 余談ですが、カカオは薬用植物としても知られています。チョコレートに薬効があるという話ではなくて、人肌の温度で溶けるカカオ脂の特徴を利用して、座薬の基材に用いられています。

 再開園した折には、身近な暮らしで役立つ植物「カカオ」の実物を植物公園でぜひご覧ください。